シャルル・ボナパルト |
1768年にフランスとコルシカの間で戦争が勃発した時、彼はまだ20歳をわずかに超えたばかりだった。彼はパオリの忠実な友にして、熱烈なコルシカ独立支持派であった。コルシカ公会のメンバーに任じられた際、次のような熱のこもった演説を行い、この反乱を決定付けたという。「自由を獲得するために自由を望むだけなら、この世界のすべての国は自由になるだろう。だが自由がもたらす恩恵を享受できている者はほとんどいない。なぜならば、自由を得るに価する熱意と勇気と徳性を有する者が皆無だからだ。」1769年6月のフランス軍によるコルシカ制圧の時は、彼はパオリに伴ってポルト・ヴェッキオまで後退し、更に船乗り出そうとしたが、叔父のリュシアン助祭長の介入と年若い妻への愛着心から断念した。
フランス政府は、貴族、聖職者、第三身分の階級から構成されるコルシカ臨時政府を任命した。またブルガンディーの代官制度のような、12人の貴族から成る代官によってコルシカを統治させ続けた。コルシカ島で人気を博していたシャルル・ボナパルトは、この代官制度の一端を担い、アジャクシオ裁判所に補佐役として所属した。これがチャンスとなって、この国の最高評議会への途が開かれることになる。1777年、国によって彼はヴェルサイユの宮廷におけるコルシカ貴族の代表者に任命される。聖職者階級ではネッビオ司祭が、第三身分階級ではカサビアンカが選出されていた。
トスカーナ大公と面会するシャルルとナポレオン |
シャルル・ボナパルトはこの機会に二人の息子、ジョセフとナポレオンを連れて行った。それぞれ10歳と9歳だった。彼は息子達をオータンの公立学校に入れ、兄のジョゼフはそこで学業を修了し、弟のナポレオンは勅許学生としてブリエンヌ士官学校に進学した。シャルル・ボナパルトは1785年2月24日、38歳の若さで胃癌のため死去する。胃癌—これはやがて名を上げる彼の息子にとっても死因となる。セント・ヘレナ島にてナポレオンは父親の死がもたらした混乱について次のように述懐している。「父はヴェルサイユにコルシカ貴族代表者として私を伴って向かった。私たちはトスカーナを通過し、フィレンツェとその大公を見たのちパリに到着した。我々は誘われて王妃と拝謁した。父はこの上ないもてなしを受け、そして私はブリエンヌに入学した。父はコルシカを出立した時に既に病気で、気候の変化は父の身体に良くなかった。父は苦しみ、痩せ細り、食べたものを消化できなくなった。そして、家族と離れてもそれに見合う恩恵が無かったと知ると、再び家族と会える事を強く望むようになった。父は帰途につき、モンペリエまで何とかやってきたが、突如身体の不調が深刻なものになった。彼は医者にかかり、薬を飲んだが、どちらも事態を好転させなかった。そして、父は勧めに従い治療食と果汁が含まれた梨を食べることにした。父はそれらを大量に摂取し、運動もかなり行ったことで、持ち直していった。」「しかし、残念ながら、病の根源は根絶できなかった。これは軽減でしかなく、病は一時的に進行を遅らされていただけで、やがてすぐに更に荒々しさを増して再発した。病状が以前より悪化していった為に、父はコルシカに何月も居続けられなかった。例の治療法が一度は彼の命を救ったように、再びそれによって命を長らえさせようとした。よって父はジョゼフを伴ってモンペリエに向かった。しかし父の最期の時は近づいていた。あらゆる薬の効き目がなくなった。私は父の状況に全く無知で、父が荒ぶる苦痛と奮闘しているその時に、ただ静かに学問を究めようとしていた。彼は死んだ。私は彼の瞼を閉じて慰めることもできなかった。この悲しむべき役目はジョゼフが愛情ある息子として熱情を込めて務めた。この物悲しい出来事は私を強く打ち据えた。父は決して信仰心が篤い人物ではなく、反宗教的な詩すら数編書いたこともあるが、自らの墓穴が半分まで掘り開けられるより前には、僧侶を熱心に敬愛するようになっていた。彼は、僧侶に祈願を託し、また呼んで来させた。モンペリエ中の聖職者を合わせても彼の望みを満足させるに十分ではなかった。」
統領政府期、モンペリエの名士達が同郷の内務大臣シャプタルを通じて、第一統領に彼の父の記念碑の建立許可を求めた。ナポレオンは彼らの好意に感謝しつつも、その懇願には応じなかった。「死者の安息を妨げないようにしよう」と彼は述べた。「死者の遺灰は平穏にしておくのが良い。父が昨日死去したというならば、私の現在の身分に相応しい形で、父の思い出に敬意を表すのは自然でありもっともな事だが、もはや20年近く前の出来事で、大衆は何の関心も寄せはしない。」
しかしながら、ルイ・ボナパルトは後年になって、ナポレオンの感知しないところで父の遺骸を掘り起こし、サン=ルに改葬させ、そこに父の記念碑をしかるべき形で建立した。
シャルルの墓 |
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